2-2 相続人の範囲
Q6:誰が相続人になるか教えてください。
A6:被相続人の配偶者は常に相続人になります。配偶者と同順位で、@子A直系尊属B兄弟姉妹の順で、相続人になります。嫡出でない子も相続人ですが、相続分は嫡出子の1/2です。片親違いの兄弟姉妹(半血の兄弟)も相続人ですが、全血の兄弟の1/2です。
Q7:代襲相続とは何ですか。
A7:被相続人の子が、被相続人の死亡以前に死亡していたときには、孫が子を代襲して相続します。兄弟姉妹が以前に死亡していたときも兄弟姉妹の子が兄弟姉妹を代襲します。
Q8:被相続人の子の子(孫)も被相続人の死亡以前に死亡していたときはどうなりますか。
A8:被相続人の子の子の子(ひ孫)が代襲します(再代襲相続)。兄弟姉妹には再代襲相続の適用はありませんので、注意が必要です。
Q9:相続人になれないことがあるのですか。
A9:相続人の意思に反して相続人になれないことがあります。@相続欠格は当然に相続人になれない場合が法定されています。相続人が被相続人を殺害した場合などです。A相続人の廃除は当然には相続権はなくならないのですが、被相続人が相続させたくないとき、生前に家裁に請求することで、遺言で排除の意思を示すことで、推定相続人の相続権を奪うことができます。
Q10:相続人がいないときには、相続財産はどうなるのですか。
A10:相続財産を法人とし、相続財産管理人をおきその旨を公告します。一定期間内に相続人があることが明らかにならなかったときには、相続財産管理人は相続債権者・受遺者に請求の申し出をすべき公告をします。なお相続人があることが明らかにならなかったときには、相続人捜索の公告をします。権利を主張する者がいないとき、特別縁故者へ財産分与を行います。その者もいないときには、相続財産は国庫に帰属します。
Q11:相続人を調べるにはどうしたらよいですか。
A11:故人の除籍謄本を取ることから始めます。そこから故人の出生までさかのぼって、除籍(改正原)戸籍謄本を取得していき、相続人の範囲を確認します。相続人の現住所は、相続人の戸籍の付票をとることで、判明します。
Q12:相続人の中に未成年者がいるときには、遺産分割協議はどのように行えばよいのですか。
A12:未成年者の法定代理人(親権者)が協議に参加します。親権者も相続人で利害が対立するときには、家裁に特別代理人の選任を求めます。
Q13:相続人の中に認知症の者がいるときはどうですか。
A13:認知症で事理弁識能力がない場合は、家裁に成年後見の申立をし、成年後見人に協議に参加してもらいます。
Q14:相続人の中に行方不明者がいるときにはどうですか。
A14:家裁に「不在者の財産管理人」を選任してもらって、その者が協議に参加します。
2-3 相続財産の範囲
Q15:何が相続の対象になりますか。
A15:相続は、被相続人の相続財産を包括承継(そのままの形で一切を承継)するもので、プラスの財産のみならず、マイナスの相続債務も相続します。プラスの財産としては、不動産、預貯金、株式、その他債権などがあります。
Q16:相続財産にならないものもありますか。
A16:祭祀財産は相続されません。また、一身専属の権利義務は承継されません。美空ひばりがステージで歌うという契約上の債務は、相続されません。
Q17:相続財産に何があるか調べる方法を教えてください。
A17:不動産なら、故人の固定資産評価証明書の交付を求めます。預貯金は金融機関の支店まで分かれば残高証明書を取得できます。疎遠だった相続人であり、預貯金の見当もつかなければ、調査会社に調査を依頼するのも一つの手です。株式等では配当通知などを手がかりにします。
Q18:生命保険は相続財産になりますか。
A18:生命保険は受取人が特定の者であるとき、相続人となっているとき、特定の者・相続人の固有の財産になり、相続財産にはなりません。受取人が被相続人であるときには、相続財産になります。
Q19:相続財産はほとんどないのに、一人の相続人だけ多額の生命保険を受け取ったとき、あまりに不公平ではありませんか。
A19:最高裁は、このような不公平を是正するために、生命保険を特別受益と同じにみて、持ち戻しをすべき場合もあるとしています。
Q20:生命保険は相続税申告の時にはどういう扱いになりますか。
A20:相続税の計算上は、生命保険はみなし相続財産として、課税価格計算の基礎になります。このとき、500万円×法定相続人の数の額が控除できます。
Q21:ほかの相続人が相続財産を隠して教えてくれないときどうすればよいですか。
A21:相続財産を隠したつもりでも、不動産なら他の相続人の実印がなければ登記ができませんし、預貯金も払い戻しはできません。この道理を説明し、根気よく開示を促しましょう。Q17で述べたように自分自身でも調査する努力はしましょう。
Q22:被相続人と同居の相続人が被相続人の預金を勝手に引き出しています。どのように対応できますか。
A22:引き出した預金が現金として残っている、あるいは、その分特別受益を得ているとして遺産分割のときに相続財産の範囲に含めるように求めます。相続人がこれに応じないときには、民事訴訟で解決するしかありません。被相続人生前の引き出しであれば、被相続人に対する横領として、不当利得返還請求、不法行為による損害賠償請求の対象になり、相続人はこの請求権を相続したとして行使可能ですし、被相続人死後の引き出しであれば、預金は分割債権として承継されているので、各相続人に対する横領となり、各相続人が自分自身の不当利得返還請求、不法行為による損害賠償請求が可能です。
Q23:遺産分割未了のとき、遺産から生じた賃料等の収入は誰のものになりますか。
A23:賃料を生む不動産は、相続開始により当然に共同相続人の共有になります。遺産分割までの間にこの共有物から生じた賃料債権は、遺産とは別個の財産であって、各共同相続人がその相続分に応じて、分割単独債権として取得します。賃料を相続分で割って得られた額を各人単独で請求できるのです。この後、一人の相続人がこの不動産を単独で相続したとしても、この結果は影響を受けません。なお、遺産分割後に生じた賃料は、遺産分割によりこの不動産を所得した者が単独で請求できます。
Q24:金銭債務は遺産分割の対象になるのですか。
A24:相続債務が金銭債務のように過分のもののときは、遺産分割を経ることなくその相続分に応じて当然に各相続人に承継されます。
Q25:葬儀費用は誰が負担するのですか
A25:相続財産に関する費用として、遺産の中から支弁します。同じく固定資産税等も遺産の中から支弁できます。
Q26:相続税の課税価格計算のために、差し引きされるものは何ですか。
A26:被相続人の確定した債務と葬儀費用は相続税の課税価格から債務として控除できます。
2-4 相続分
Q27:法定相続分について教えてください。
A27:配偶者と子が相続人のときには、各1/2が相続分で、配偶者と直系尊属が相続人のときには、配偶者2/3・直系尊属1/3が相続分です。そして、配偶者と兄弟姉妹が相続人のときには、配偶者3/4・兄弟姉妹1/4が相続分です。子、直系尊属、兄弟姉妹が数人ある時は、各人の相続分は平等です。ただし、非嫡出子は嫡出子の1/2で、半血の兄弟は全血の兄弟の1/2です。
Q28:指定相続分とは何ですか。
A28:被相続人が、遺言で法定相続の規定によらず、遺言により相続分を指定することで、相続人は遺言とおり当然に遺産を取得することになります。
Q29:特別受益とは何ですか。
A29:相続人の中に、遺贈を受け、または婚姻・養子縁組のため、あるいは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人の相続開始時に有した財産にその者の受け取った価格を加えて相続財産とし、法定相続分により計算した相続分の中から遺贈等の価格を控除した額をその者の取得する額とする制度です。この計算の仕方を、特別受益による持ち戻しといいます。
Q30:特別受益で計算される贈与された財産の評価は、いつの時点現在のものになりますか。
A30:その財産の相続開始時点の時価を基礎とします。
Q31:相続人が妻Wと子ABのとき、相続財産が1000万円で、Aが400万円の生前贈与を受けていた場合、各人の相続分はどう計算されますか。
A31:相続開始時の財産に生前贈与の価格を加えた1400万円を法定相続分で分けます。Aの相続分は、1400万円×1/2×1/2=350万円という計算結果になりますが、この計算結果が生前贈与額を超過していたときは、Aは50万円を自身の財産から拠出する必要はありません。Aに相続により所得する財産はなく、1400万円−400万円=1000万円をWBで分けることになります。
Q32:持ち戻しが免除されることはありますか。
A32:被相続人が、遺言であるいは生前に持ち戻し義務を免除できます。特別受益が遺贈であるときには、持ち戻しの免除も遺言でなされる必要がありますが、生前贈与であるときは、持ち戻し免除の意思表示は特別の方式を要しません。
Q33:代襲相続のとき、被代襲者の特別受益を代襲相続人が持ち戻さなくてはならないのですか。
A33:実質的な公平の観点から考えます。代襲相続人が被代襲者の特別受益により経済的利益を受けているときには、持ち戻しを認めるべきでしょう。
Q34:寄与分とは何ですか。
A34:共同相続人の中に、労務の提供または財産状の給付、被相続人の療養看護その他の方法で被相続人の財産の維持増加に特別の寄与をした者がある場合には、その寄与分を控除したものを相続財産とみなし、相続分の計算を行う制度です。寄与者の具体的取り分は、その計算の結果プラス寄与分の額です。
Q35:代襲相続のとき、被代襲者の特別の寄与を代襲者が主張できますか。
A35:寄与分が相続人間の衡平をはかる制度である点で、主張できると解すべきです。
2-5 分割の方法
Q36:遺産分割はどのような手続きで行われますか。
A36:まずは、相続人同士の協議で行われます。話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所に調停を起こすこともできます。調停が不成立なら、当然に審判に移行します。
Q37:遺産分割の手法を教えてください。
A37:まずは、現物分割が基本です。土地はAに、預貯金はBに、という分け方です。各財産の価格が割りきれないときには、遺産のすべてを換価してお金を分けるという手法もあります(換価分割)。遺産を一人の相続人が取得して、代償金を他の相続人に支払う手法もあります(代償分割)。遺産のすべてを共有にする手法もあります(共有分割)。
Q38:遺産分割に期間の制限はありますか。
A38:相続税の申告期限が相続開始を知ったときから10ヶ月以内なので、遺産分割協議もこの期間中になされる必要があると誤解されているようです。遺産分割に期間の制限はなく、いつでも分割ができます。ただ、申告期限までに遺産分割ができていないときには、相続税の各種控除が受けられないことがあります。
Q39:遺産分割調停は、どのように行われますか。
A39:裁判官である家事審判官と民間人である調停委員2人が調停委員会を構成し、当事者双方から順次話を聞き、話し合いを促します。調停は裁判所で行うので、勝った負けたがあると思っている人もいますが、基本的に話し合いなので、柔軟な対応が必要です。
Q40:遺産分割の話し合いがついた時、どのような書類を交わすべきでしょうか。
A40:遺産分割調停で合意に達したときには、調停調書が作成され、これをもとに不動産登記や預貯金の解約ができます。遺産分割協議がまとまったときには、遺産分割協議書を作成し、各自一通ずつ所持します。