|
労働相談(採用)
a 労働条件の明示義務
問)求人誌を見て、就職したのですが、求人誌の記載と異なり、交通費が出ないことがわかりました。私は会社に対して何ができますか。
答)使用者は、労働者を雇う際、労働条件(賃金、労働時間など)を明示しなければなりません(労働基準法15条1項)。そして、交通費の負担の有無も労働条件の一つです。面接のときなどに労働条件が求人誌とは異なるなどの説明がなかった場合には、あなたは、即時に労働契約を解除することができます(同条2項)。また、あなたが会社への就職のために住居を変えたのであれば、帰郷するに必要な費用の負担を会社に求めることができます(同条3項)。
b 採用自由の原則の制限
問)ある会社に就職を希望して、面接してもらいましたが、過去にほかの会社で組合活動をしていたことを理由に採用を拒否されました。このような採用拒否は違法ではないのでしょうか。
答)使用者は「契約自由の原則」により、労働基準法等に違反しない限り労働者の採用を自由に行うことができます。つまり、雇う、雇わないは使用者の自由なのです。ただ、労働組合法7条は、労働者の正当な組合活動を理由とする不利益取り扱いを禁止していますから、会社のとった措置は不当労働行為であり、あなたは労働委員会に救済を求めることができます。
c 採用内定
問)私は大学4年生ですが、ある会社から採用内定をもらいました。しかし、会社の業績が悪化したとの理由で、突然内定の取り消しを通告されました。私は、その会社の内定が決まっていたので、ほかの会社の誘いをすべて断ってしまっています。私は就労できないのでしょうか。
答)法律的には、あなたの会社への応募が労働契約の申し込みで、会社の採用内定通知がこれに対する承諾であって、これによって解除権留保付きの労働契約が成立したことになります。そして、この解除権はどんな場合でも行使できるというものではありません。内定取消事由として是認されるのは、「採用内定当時知ることができず、また知ることができないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが・・・客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる。」と最高裁は判示しています。業績悪化の程度にもよりますが、不況が深刻で中高年の管理職にも辞めてもらわなければならない事態になってしまった場合等は格別、単に会社の都合による場合は社会通念上相当とは言えないでしょう。あなたは、会社を相手に労働契約存続確認請求の訴訟を提起して、就労を求めていくことができます。
問)私は大学4年生ですが、ある会社から採用内定をもらいました。ところが、会社は大学在学中にもかかわらず、入社前研修を受けるように命じてきました。私はこれに応じるべきでしょうか。
答)あなたと会社の間では、採用内定時に解除権留保付きの労働契約が成立しています。しかし、あなたが大学4年生とすれば、通常大学卒業後のある日(4月1日が通常)が労働契約の始期として定められているでしょう。入社前の教育は、労働契約の始期前の教育であって、これに出席する義務はあなたにありません。あなたが自由参加の名目で、これに出席した場合には、労働時間として対価を求めることができます。
d 試用期間
問)私はある会社に就職して、3カ月間試用期間として研修を受けましたが、「当社の社風にあわない。」との理由で本採用を拒否されました。私はもう就労できないのでしょうか。
答)試用期間中の使用者と労働者の関係については、最高裁は、基本的には、使用者と労働者との間では、最初から期間の定めのない労働契約として成立しており、試用期間中は使用者に労働者の不適格を理由として解約する権利が通常の解雇よりも大幅に留保されている関係にあると解しています。ただ、解約する権利を行使するにも、「社会通念上是認できるような客観的合理的理由」が必要です。一般的には、重大な経歴詐称や職務上の重大ミスがあった場合などにのみ合理的理由があるといえるでしょう。「当社の社風に合わない」との理由は抽象的過ぎ合理的理由にはなりません。あなたは、会社を相手に労働契約存続確認請求の訴訟を提起して、就労を求めていくことができます。
問)私はある会社に就職して、3ヶ月間試用期間として研修を受けましたが、会社はさらに3ヶ月間の試用期間を設けたいと言ってきました。これに応じなくてはなりませんか。
答)試用期間の延長は、就業規則に規定がない限り会社から一方的にすることは許されません。試用期間は、労働者にとって身分関係が不安定であるからです。また、就業規則に定めがあっても、特別の事情がなければ許されません。あなたは、本採用を求めていくことができます。
e 雇用期間
問)私はある会社に就職しましたが、時間が不規則なので辞めたいと考えています。ところが、そのことを会社側に伝えたら、3年間は勤めてもらわないと会社はもとがとれないと言われて辞めさせてもらえません。どうしたら良いですか。
答)あなたと会社との間に雇用期間について特段の取り決めがなければ、期間の定めのない労働契約であることになります。(ちなみに、労働基準法は1年を超える期間を雇用期間として定めることはできないと定めています。ですから1年以下の雇用期間を定めた場合以外は、期間の定めのない契約になります。)その場合、あなたはいつでも労働契約の解約の申し入れができます(民法627条)。ただ、その申し入れ後2週間を経過した時点で解約の効力が発生しますから(同条)、その期間引継ぎや残務整理をすることが必要です。
|