労働条件(労働条件)

A 就業規則、労働協約

問)労働条件はどのようにして決められるのですか。

答)労働条件は、労働者と使用者が対等の立場で契約によって決定します(労働基本法2条1項)。)労働協約、就業規則に違反する労働契約は違反する部分について無効です(労働組合法16条、労働基準法93条)。また、労働基準法は、労働条件の最低基準を定めたもので、これに違反する労働協約、就業規則は無効です。

問)私は、ある会社と月給20万円で労働契約を結びましたが、就業規則では月給が25万円と定められていることが分かりました。私の月給はどうなりますか。また労働契約で月給25万円、就業規則で月給20万円と定められている場合はどうですか。

答)常時10人以上の労働者を使用する使用者は賃金、労働時間等重要な労働条件について就業規則を作成することが必要とされています(労働基準法89条1項)。就業規則に規定のある労働条件について、それに満たない労働条件を定めた労働契約は無効で、無効部分は就業規則に定められた内容に変更されます(同法93条)。質問の前段の場合、あなたの賃金は月給25万円になります。また、就業規則より優遇された個別の労働条件を契約で定めた場合には契約が優先します。質問の後段の場合も、あなたの賃金は月給25万円になります。

問)就業規則はどのようにして定められるのですか。

答)就業規則を作成するのは使用者です(労働基準法89条)もっとも、就業規則を作成するには、一定の手続きを履践することが必要で、具体的には、労働者側の意見聴取(同法90条)、労働基準監督署への届出(同法89条)、事業所内への周知(同法106条1項)が必要です。

問)私の会社では、就業規則で始業時間が8時と定められているということですが、私はそのような決まりがあることを知りませんでした。私はこの決まりを守らなくてなりませんか。

答)就業規則は法的規範性が認められると解されていますから(秋北バス事件最高裁判決・S43/12/25)、あなたが就業規則の内容を知らなかったとしても、当然にその適用を受け、これを守らなければなりません。もっとも、就業規則を作成するには、手続きの一つとして事業所内への周知(同法106条1項)が必要です。周知の方法は、常時作業場の見やすい場所に掲示または備え付けることや、労働者に書面を交付すること、オンラインで閲覧できるようにすることです。これらを欠いていた場合は就業規則は無効で、あなたはこれを守る必要はありません。

問)私の会社では、就業規則で始業時間が定められていますが、これを定めるとき、労働組合が反対の意見を述べたと聞いています。この就業規則は無効ではありませんか。

答)使用者が就業規則を定めるには、労働者側の意見を聞くことが必要です(労働基準法90条1項)が、労働組合が反対の意見を出しても、そのことで就業規則が無効になるわけではありません。あくまで、就業規則を定めるに当たって、労働者の意見を反映するための機会を与えれば良いのです。就業規則は最低基準で、労働者は労働組合の団結の力により、労働協約で労働条件を定めていけば良いのです。

問)労働協約はどのようにして定められるのですか。

答)労働組合と使用者が労働条件や組合活動について合意し、その内容を文書で取り交わし、両者が署名または記名捺印することで効力を生じます(労働組合法14条)。

問)労働協約で、労働時間が一日7.5時間と定められているのに、会社が就業規則でこれを8時間と定めました。私は何ができますか。

答)就業規則は、法令または当該事業場について適用される労働協約に反してはなりません(労働基準法92条1項)。あなたは、労働基準監督署へ申し出て、変更命令を出してもらえます(同2項)。

問)私は労働組合に入っていませんが、このたび会社の労働組合が就業規則より有利な労働条件を協約で獲得したと聞きました。私はこの恩恵を受けることができますか。

答)原則として、労働協約はその労働組合の組合員にのみ適用があります。ただし、「一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用されるほかの同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用される」(労働組合法17条)のです。あなたが、会社内で、職務内容や勤務形態、人事処遇の体系等で協約適用対象者と大きく異ならない「同種の労働者」であれば、協約の恩恵を受けることができます。

B 賃金

a 賃金支払いの諸原則

問)賃金はどのように支払われるものなのですか。

答)賃金は、労働者に「通貨で」「直接」「その全額を」支払わなければならないとされ(労働基準法24条1項)、「毎月一回以上」「一定の期日を定めて」支払わなければならないとされています(同2項)。これを賃金支払いの5原則といいます。

問)従業員に、通勤手当を定期券で支給することはできますか。

答)通勤手当は、賃金の一つですから、通貨により支払われるのが原則です(労働基準法24条1項)。しかし、労働協約の定めがある場合は設問のように現物給与も可能です(同条項但書き)。

問)従業員の給与を口座振り込みにする場合、どのような手続きを踏めば良いですか。

答)給与の支払いを口座振り込みの方法で行うことは、賃金の通貨払いの原則の例外として認められています(労働基準法施行規則7条の2)。これには、@本人の意思によることA本人名義の口座に振り込むことB支払日におろすことができる状態にしておくことが必要です。

問)私は会社を経営していますが、ある社員の奥さんから、社員とは離婚を前提として別居中であり、社員から給料の半分をもらえるという約束になっているので、それを渡してほしいと言われました。どのようにすれば良いでしょうか。

答)賃金は労働者に直接支払わなければなりません(労働基準法24条1項)。ただ、中間搾取の余地がなく、単に本人に伝達するだけの役割の使者に対する支払いはこれに違反しないとされています。このケースでは、奥さんは離婚を前提として別居中であるというのですから、社員の使者とはいえないでしょう。そこで、あなたは奥さんの要求を拒まなくてはなりません。一方、奥さんが裁判所に訴えでて、社員の給料を差し押さえたときは、これを奥さんに支払う必要が生じます。この場合でも、賃金の差し押さえは、税金、社会保険料を除いた額の4分の1までですから、その範囲内で支払えば足ります。

問)私の会社では、一日の労働時間が七時間とされています。会社は最近忙しくて、私も残業する日が多いのが現状です。私は残業を拒むことができないのでしょうか。また残業手当はもらえるのでしょうか。

答)労働基準法では、労働時間について、1週間に40時間、1日に8時間を越えては労働させてならない旨を規定しています(32条)。そして、1日8時間を超えない残業を「法内残業」といい、これは労働基準法では何の規制もありません。ですから、あなたの場合、1時間分の賃金は通常どおりの額が支払われるのみです。一方、会社が8時間を超えて残業させる場合(「法外残業」)は、労働者の過半数で
組織する労働組合か、それがない場合は労働者の過半数を代表する者との間で協定を結び(36協定、労働基準法36条)、残業の必要な業務の種類、残業時間の上限等を取り決めなければなりません。そして、法外残業には25パーセント以上の割増賃金を支払わなければなりません。あなたは1日の労働時間が8時間を超えた分の残業については、この割増賃金をもらえます。就業規則で定める残業時間内の残業命令には従わなければならないとするのが、最高裁の判例です。あなたは、就業規則に定める残業時間を超える残業については、これを拒めます。



b 賃金の切り下げ


c 賃金の未払い


d 一時金、退職金

問)私は、今月いっぱい(5月31日)で会社を辞めようと思っています。会社の夏季ボーナスの支給日は6月15日ですが、私はボーナスをもらえるでしょうか。

答)ボーナス(一時金と呼ばれる)は一般的に、支給対象期間の労働に対する賃金の後払いという性格をもっているといわれます。すると、その期間を働いた人には、支給日に会社に在籍していようがしていまいが、ボーナスは支払われるものとも考えられます。ただ、一時金支給の条件を就業規則などで定めているところでは、支給日に在籍していることを条件として挙げているところが多く見られます。そして、裁判例は、支給日在籍条項は必ずしも不合理でなく、有効とするものが多いのが現状です。まずは就業規則をよく読んでください。

C 労働時間と休日


問)私の会社では、完全週休二日制を採用していますが、最近忙しくて休みの日が一日もありません。割増賃金はもらえるのでしょうか。

答)労働基準法では、毎週少なくとも1日の休日を与えなければならないと定めています(35条1項)。週一日の休日を法定休日といい、これを上回る休日は法定外休日といいます。完全週休二日制は
、いずれかの休日が法定休日ということになります。法定休日に労働させるには、労働者の過半数で組織する労働組合か、それがない場合は労働者の過半数を代表する者との間で協定を結び、25パーセント以上の割増賃金を支払わなければなりません。ですから、あなたは休日出勤の1日分について、割増賃金をいもらえることになります。

問)私は、デパートの売り子をしていますが、先日、友達と旅行に行くために年休を取りたいと申し出たところ、会社から売り出しで忙しいから年休を与えられないと言われました。このような会社の言い分は違法ではないですか。

答)年休の権利は、本人が一方的に日にちを指定すること(時季指定権)で権利行使の日が確定し、会社の了解はいりません。ただ、会社にも別の日に年休を指定する権利(時季変更権)が留保されています。この時季変更権につき、最高裁は、労働基準法の趣旨は、使用者に対し、できる限り労働者が指定した時季に休暇を取得することができるように、状況に応じた配慮をすることを要請しているもので、そのような配慮をせずに時季変更権を行使することは許されないとしています(時事通信社事件)。具体的には、会社は代替要員確保の努力等をしなければならず、あなたの場合、デパートの売り子さんですからその確保は容易なはずですので、会社の言い分は違法でしょう。

D 休暇と休業


問)私は、勤務する会社から、都合により当分の間自宅待機してくれと言われました。私はその間お給料はもらえないのでしょうか。

答)あなたは会社の責に帰すべき事由により休業を余儀なくされたのですから、原則として給料全額の支払いを請求することができます(民法536条2項)。さらに、労働基準法は休業中の賃金のうち平均賃金の6割にあたる部分については、会社(使用者)側に罰則を科して、その支払いを確保していますから(労働基準法26条)、あなたの請求はより厚い保護を受けるといってよいでしょう。ここで、平均賃金とは、「これを算定する事由が発生した日以前三ヶ月間に支払った賃金総額を、その期間の総日数で割った金額」をいい(同法12条)、「賃金総額」は通勤手当等の諸手当を含む賃金として支払われたものすべてを指します。

問)結婚3年目にして子供ができました。会社勤めをしていますが、会社を休めますか。また、休んでいる間の給料の保障はどうですか。

答)まず、産前産後休暇をとることができます。それぞれ、出産予定日の6週間前から、また出産後の8週間の休みがとれます(労働基準法65条)。さらに、生後1歳に満たない子供を育てる女性は、1日2回それぞれ少なくとも30分、育児のための時間を請求できます(同法67条)。保育園の送り迎えなどに使えます。ただ、これら、産休中、育児期間中の賃金の保障については法律で決められていません。ですから、当然には給料をもらうことはできません。なお、産休中については、健康保険から出産手当金として賃金の約60パーセントが支払われます。次に、育児休業法は、子供が1歳になるまで育児休業ができる旨を定めています。これは、男女ともに取ることができるので、ご主人も育児休業できます。ただ、この場合も給料の保障がありません。

E 非正規雇用

労働相談(採用)

a 労働条件の明示義務

問)求人誌を見て、就職したのですが、求人誌の記載と異なり、交通費が出ないことがわかりました。私は会社に対して何ができますか。

答)使用者は、労働者を雇う際、労働条件(賃金、労働時間など)を明示しなければなりません(労働基準法15条1項)。そして、交通費の負担の有無も労働条件の一つです。面接のときなどに労働条件が求人誌とは異なるなどの説明がなかった場合には、あなたは、即時に労働契約を解除することができます(同条2項)。また、あなたが会社への就職のために住居を変えたのであれば、帰郷するに必要な費用の負担を会社に求めることができます(同条3項)。

b 採用自由の原則の制限

問)ある会社に就職を希望して、面接してもらいましたが、過去にほかの会社で組合活動をしていたことを理由に採用を拒否されました。このような採用拒否は違法ではないのでしょうか。

答)使用者は「契約自由の原則」により、労働基準法等に違反しない限り労働者の採用を自由に行うことができます。つまり、雇う、雇わないは使用者の自由なのです。ただ、労働組合法7条は、労働者の正当な組合活動を理由とする不利益取り扱いを禁止していますから、会社のとった措置は不当労働行為であり、あなたは労働委員会に救済を求めることができます。

c 採用内定 

問)私は大学4年生ですが、ある会社から採用内定をもらいました。しかし、会社の業績が悪化したとの理由で、突然内定の取り消しを通告されました。私は、その会社の内定が決まっていたので、ほかの会社の誘いをすべて断ってしまっています。私は就労できないのでしょうか。

答)法律的には、あなたの会社への応募が労働契約の申し込みで、会社の採用内定通知がこれに対する承諾であって、これによって解除権留保付きの労働契約が成立したことになります。そして、この解除権はどんな場合でも行使できるというものではありません。内定取消事由として是認されるのは、「採用内定当時知ることができず、また知ることができないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが・・・客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる。」と最高裁は判示しています。業績悪化の程度にもよりますが、不況が深刻で中高年の管理職にも辞めてもらわなければならない事態になってしまった場合等は格別、単に会社の都合による場合は社会通念上相当とは言えないでしょう。あなたは、会社を相手に労働契約存続確認請求の訴訟を提起して、就労を求めていくことができます。

問)私は大学4年生ですが、ある会社から採用内定をもらいました。ところが、会社は大学在学中にもかかわらず、入社前研修を受けるように命じてきました。私はこれに応じるべきでしょうか。

答)あなたと会社の間では、採用内定時に解除権留保付きの労働契約が成立しています。しかし、あなたが大学4年生とすれば、通常大学卒業後のある日(4月1日が通常)が労働契約の始期として定められているでしょう。入社前の教育は、労働契約の始期前の教育であって、これに出席する義務はあなたにありません。あなたが自由参加の名目で、これに出席した場合には、労働時間として対価を求めることができます。

d 試用期間

問)私はある会社に就職して、3カ月間試用期間として研修を受けましたが、「当社の社風にあわない。」との理由で本採用を拒否されました。私はもう就労できないのでしょうか。

答)試用期間中の使用者と労働者の関係については、最高裁は、基本的には、使用者と労働者との間では、最初から期間の定めのない労働契約として成立しており、試用期間中は使用者に労働者の不適格を理由として解約する権利が通常の解雇よりも大幅に留保されている関係にあると解しています。ただ、解約する権利を行使するにも、「社会通念上是認できるような客観的合理的理由」が必要です。一般的には、重大な経歴詐称や職務上の重大ミスがあった場合などにのみ合理的理由があるといえるでしょう。「当社の社風に合わない」との理由は抽象的過ぎ合理的理由にはなりません。あなたは、会社を相手に労働契約存続確認請求の訴訟を提起して、就労を求めていくことができます。

問)私はある会社に就職して、3ヶ月間試用期間として研修を受けましたが、会社はさらに3ヶ月間の試用期間を設けたいと言ってきました。これに応じなくてはなりませんか。

答)試用期間の延長は、就業規則に規定がない限り会社から一方的にすることは許されません。試用期間は、労働者にとって身分関係が不安定であるからです。また、就業規則に定めがあっても、特別の事情がなければ許されません。あなたは、本採用を求めていくことができます。

e 雇用期間

問)私はある会社に就職しましたが、時間が不規則なので辞めたいと考えています。ところが、そのことを会社側に伝えたら、3年間は勤めてもらわないと会社はもとがとれないと言われて辞めさせてもらえません。どうしたら良いですか。

答)あなたと会社との間に雇用期間について特段の取り決めがなければ、期間の定めのない労働契約であることになります。(ちなみに、労働基準法は1年を超える期間を雇用期間として定めることはできないと定めています。ですから1年以下の雇用期間を定めた場合以外は、期間の定めのない契約になります。)その場合、あなたはいつでも労働契約の解約の申し入れができます(民法627条)。ただ、その申し入れ後2週間を経過した時点で解約の効力が発生しますから(同条)、その期間引継ぎや残務整理をすることが必要です。


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